ダイバーシティをビジネス視点で考える PINGUINC. > INTERVIEW > LGBTフレンドリーは、誰もが安心して自分らしくあれる環境。JobRainbowが目指す、LGBTを通じたダイバーシティ
INTERVIEW
2019.03.22

LGBTフレンドリーは、誰もが安心して自分らしくあれる環境。JobRainbowが目指す、LGBTを通じたダイバーシティ

LGBTフレンドリーな企業の求人サイトを運営する株式会社JobRainbowの星賢人さん。LGBTへの取り組みは、その企業のダイバーシティな土壌を醸成すると言います。LGBTと職場の課題や企業から3年間での変化、そして今後について伺いました。

11人に1人。LGBTの課題を通し、すべての人が自分らしくあれる社会を目指すJobRainbow

「LGBTの問題には、さまざまなマイノリティに関する社会課題と共通する視点が詰まっています」

 

柔らかな物腰ながら、力強い言葉でそう語る株式会社JobRainbow代表の星賢人さん。JobRainbowでは「LGBTを通じて、すべての人が自分らしく生きることのできる機会を最大化する」と掲げ、LGBTフレンドリーな企業の求人を扱うプラットフォームの運営や、企業へのLGBT研修を行っています。

LGBTQ+へ向けた求人プラットフォーム「JobRainbow」β版リリースの告知画像

これまで口コミサイトと求人サイトの2つに分かれていたサービスを統合した新たな求人プラットフォーム「JobRainbow」を、2019年3月1日にβ版としてリリース

LGBTとは、レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダーの頭文字を取った、セクシュアルマイノリティの人たちを表す言葉。近年の調査では日本の11人に1人、約1000万人がLGBTに該当するといわれています。

 

こうした中、多くの企業がセクシュアリティに関係なく働きやすい「LGBTフレンドリー」な環境づくりに取り組みはじめています。一方で、「具体的に何をすればいいのかわからない」といった企業の声や、「まだ安心できる環境ではなく不便なことが多い」という当事者の声もあります。

 

そこで、当事者と企業両者の視点から、LGBTへの取り組みで大切なことやLGBTに関する社会の変化、そしてJobRainbowが目指す社会について、星さんに伺いました。

LGBTはマイノリティの先進課題。安心できる環境が、企業のパフォーマンスも最大化する

自身の経験やユーザーからの声を交えながら話してくださった星さん

自身の経験やユーザーからの声を交えながら話してくださった星さん

企業とLGBT当事者の間にある情報の非対称性を、インターネットサービスで埋める

セクシュアルマイノリティであることで、働く希望が断たれる現状

―― なぜ、LGBTの求人サービスに取り組むようになったのでしょうか?

星:

僕自身がセクシュアルマイノリティ当事者であること、そして大学で出会ったトランスジェンダーの先輩が就職活動で苦悩する姿を目の当たりにしたことがきっかけです。

 

自身がゲイだと気付いたのは、中学生の頃。保健体育の教科書に「思春期になれば“自然と”異性とひかれあう」と書いてあったんです。その「自然と」という言葉を見て漠然と「自分は不自然な存在なんだ」と感じ、家族や友人にも自身がゲイであることは伝えてはいけないと思いました。それでも周囲からは仕草などで「女々しい」といじられることが多々あり、耐えられず教師に相談したところ「お前が女々しいから悪いんだよ」と言われてしまって。

手を胸の前で広げ、視線を下げながら話す男性

「次第に学校に通うのが苦しくなり、半分ぐらい不登校だった時期があります」

星:

そんな中、オンラインゲームを通して学外の人と関わるようになりました。ゲーム仲間とはとても仲がよかったですし、みんな自分よりも大人。思い切ってカミングアウト(自身のセクシュアリティを他者に開示すること)したら、受け止めてくれる人がたくさんいたんです。居場所は教室だけで作ろうとしなくても、学外の世界にあると感じ、前に進めるようになりました。

 

大学では、自身でセーフティネットを作ろうとLGBTサークルの代表になりました。そこで出会ったのが、高校までは男性として生活し、大学へは女性として入学したトランスジェンダーの先輩です。彼女は楽しく大学生活を過ごしていたのですが、就職活動でトランスジェンダーであることに悩む場面が出てきました。

―― どのようなことに悩んだのでしょうか?

星:

例えば、就活サイトの登録。名前のすぐ下に性別欄があり、選択肢は「男女」しかないのでどちらに丸をつけたらいいか分からない。スーツも女性用・男性用がはっきり分かれている。面接まで進んでも、面接官にカミングアウトしたら「あなたのような人はうちの会社にはいないので、無理です」と言われたそうです。

 

そういったことが積み重なり、彼女は就活を続けられなくなりました。大学を出て正社員として就職し、女性として当たり前の生活を手に入れるという大きな目標があったのに、それが断たれてしまった。「通っても意味がない」と大学も辞めてしまいました。

 

今の社会では「働く」って自己実現につながる大きな要素ですよね。その機会がセクシュアルマイノリティであることで奪われるのは、あってはならないことだと思いました。

LGBTフレンドリーな企業がある。その存在だけで、希望が持てる

星:

その後、僕自身も就活の一環でマイクロソフトのサマーインターンに参加したのですが、そこで社内にLGBTサークルがあることを知りました。役員クラスを中心に、会社全体でそのサークル活動をサポートしていたんです。こういう企業の存在を知っていたら、就活を諦めた彼女も「セクシャルマイノリティを受け入れてくれる会社がある」と希望を持てたと思うんです。

 

近年はLGBTフレンドリーな企業が増えてきました。でも、その企業や取り組みが伝わるべき人に伝わっていない。当事者は情報をすごく求めているのに、得られていない。この情報の非対称性を、中学時代に自身が救われたインターネットというプラットフォームで埋めていきたいと考え、LGBTフレンドリーな企業の口コミ情報サービスとしてJobRainbowを立ち上げました。起業の約1年後からは、求人サービスも開始しました。

「はたらくをにじいろに」と書かれたスライドの前に立ち、ピッチプレゼンを行う星さん

在学中に出場したビジネスコンテストで優勝したのを契機に、2016年JobRainbowをスタートしました

―― 口コミ情報サイトを運営する中で、情報を届けるだけでなく、企業と人をつなぐ求人サービスの必要性も感じられたのですか?

星:

ある企業から「うちはLGBTフレンドリーだし、もっと取り組みを進めていきたいので、それを当事者に伝えて採用につなげたい」という相談があったんです。一方で、ユーザーからは「JobRainbowにはLGBTフレンドリーな企業がたくさん載っているけれど、実際にその企業の一般の採用ページに行くと性別欄に男女しかない」という声が寄せられていました。そこで先程の企業の求人情報を載せたら、約50件の応募が集まったんです。これは大きなニーズがあると思い、求人サイトを立ち上げました。

 

技術的な側面で口コミ情報サイトと求人サイトを分けていましたが、今年からはこの2つを統合し新たな「JobRainbow」として、一ヶ所でLGBTの就活情報がすべて手に入るようにしていきます。新生「JobRainbow」では、LGBTの働きやすさをグラフで確認でき、企業からのスカウトを受けられる機能もあります。

取り組もうと思った時点で、LGBTフレンドリー。まずは会社の指針とメッセージから

「LGBTフレンドリー」は採用活動における企業の経営資源

―― 企業から問い合わせがあるくらい、採用側のニーズも大きいんですね。

星:

時代の流れとして「人材不足」が大きな後押しになっています。「LGBTだから欲しい」というわけではなく、企業は活躍する人が欲しいだけなんです。採用活動が厳しい中、企業や経営者がセクシュアリティに関係なく優秀で自社にマッチする人材を採りたいと考えるのは当然ですよね。人材確保において「LGBTフレンドリー」は企業の経営資源。それを最大限に活かして、ポテンシャルがある人を自社に呼び込むという点でニーズがあるのだと思います。

―― 特に取り組みが進んでいる業界はありますか?

星:

やはり、業界として新しいIT業界やスタートアップ企業は取り組みが進みやすい傾向があります。また、最近は運送業界やタクシー業界でも進んできています。運転手の業務は職場でほかの職員と机を並べている時間が少ないので、自分らしくいることのストレスが低いんです。トランスジェンダーで生き生き働くドライバーがたくさんいる企業もあります。

 

ほかには、介護業界も多いですね。もともと女性比率が高く、重労働ではあるけれど男女関係なく活躍する文化が根付いている職場が多いので、LGBTを受け入れやすい土壌があるのだと思います。介護サービスを受ける高齢者にもLGBTの方がいるそうで、LGBT職員がいた方が対応の幅が広がるという利点もあります。

まずは企業の指針から。制度があるだけで「応援している」メッセージに

―― セクシュアリティに関わらず働きやすい環境を作るために、企業はどのように取り組みを進めればいいでしょうか?

星:

まず企業の指針やメッセージとして、LGBTフレンドリーな環境作りへの取り組みを社員に伝えていくことです。例えば、就業規則にセクシュアリティによる差別禁止の規定を入れる等が挙げられます。当事者はカミングアウトしたいと思っても、1%でもできない理由があるとカミングアウトしにくくなります。LGBTを理由にイジメや昇進できないといった差別にあったとき、会社がその人を守る姿勢が見えているかはとても重要です。

 

その上で、福利厚生等の制度にセクシュアリティによる不平等がないかが大切になります。例えば、同性のパートナーでも、異性婚と同様に、慶弔休暇や転勤時の別居手当などが出るようにするなどが挙げられます。

―― トランスジェンダーの場合は、どのような配慮があるといいですか?

星:

トランスジェンダー特有の問題では、在職中にトランスしていく場合に困ることが多々あります。ホルモン治療を始めると1〜2年の間にどんどん中性化していき、最終的には女性から男性、男性から女性に変化していきます。見た目の変化を不審がられないかはとても不安だと思います。

 

性別適合手術を受ける場合も1〜2ヶ月の休暇を取らなければなりません。そこで、例えば大手飲料メーカーのキリン・グループでは、5年以上在職していれば休暇を積み立て、最大60日の有給休暇を取得できる制度があり、その制度を性別適合手術のために使用できるとしています。こういった制度があると、在職中でも安心してトランスできますし、より前向きに自分らしく生きるための選択肢を考えていけます。

両手を机の上で広げ、前を見ながら話す男性

「制度があるということは、企業が応援してくれているというメッセージなんです」

星:

そのほかに困る場面として、例えば求職時に戸籍はすでに男性へ変更していても、学歴に「〇〇女子大学」とあり、カミングアウトせざるを得ないケースなどがあります。実際、JobRainbowのFTMトランスジェンダー(出生時の性別が女性で、自認する性が男性の人)のスタッフは、戸籍を変更してからの方がむしろカミングアウトしなければならない場面が増えたと話していました。

―― 働く人の意識として、企業研修をされる中でギャップを感じられることはありますか?

星:

「性の話を職場に持ち込む必要があるのか」と言われることがあります。その背景には、LGBTは性癖のような、持ち出してはいけない個人の事情と見られがちな側面があります。でも、LGBTの話は決して性の話題ではなく、誰と共に生きるか、どのように生きるかという社会生活の基礎に関わる話なんです。

 

例えば、職場である男性が「今日は家で妻と娘がご飯を作って待ってくれているので、早く上がります」と言ったら、周囲は微笑ましいと感じますよね。でも、そこで男性である私が「今日は自分の旦那さんがご飯を作って待っているので帰ります」と言ったら、どうでしょう。それは暗にゲイであることをカミングアウトしているのですが、単純に仕事と家庭の両立の話をしているだけで、性の話をしているわけではないですよね。

 

また、LGBTであることを隠し、小さな嘘をつかざるを得ない状況が積み重なり、大きな心理的ストレスとなる方もいます。実際に仕事と私事を分けて、仕事ではLGBTであることはカミングアウトせずに働いている方もいますが、LGBTのうち隠しやすいLGBであっても、メンタルリスクは通常の約5倍と言われています。

 

カミングアウトは強制されるものではありませんが、少なくとも自分がしたいと思った時にできる自由や選択肢があることや、伝えても大丈夫だという安心感がある場で働けることは、個人の幸福や働きがいに直結します。安心感を持って働いた方が、もちろん仕事のパフォーマンスも上がりますよね。だから、企業のLGBTへの取り組みは、会社として効率を上げ、働く人も居心地よくパフォーマンスを上げる合理的な取り組みだと考えています。

「取り組もう」と思った時点で、その企業はLGBTフレンドリー

―― 制度やオフィスなどのハード面やスタッフのマインドを変えていくには時間がかかることもあります。どの程度取り組みが進んでいたら「LGBTフレンドリー」と言えるのでしょうか?

星:

JobRainbowへの求人掲載の可否は、NPOなどの団体や弊社によるLGBT研修を受けているかをボーダーラインにしています。ソフト面として、採用担当や人事担当にLGBTへの理解があり、社内で問題が発生した場合も対処できる状態を作っているかが1つの判断基準です。

 

一方で、LGBT研修を受けていなくても、「LGBTに対して理解したい、取り組みたい」と会社に働きかけたら、その時点で「LGBTフレンドリー」だと思うんです。そこにすらたどり着いていない企業が多い中で、「変えていこう」という思いがあるというだけで、当事者としてはものすごく心強い。一歩ずつでも取り組もうとしているなら、その企業はすでにフレンドリーだと思います。

―― 「まだ制度が追いついていないから、LGBTフレンドリーとは言えない」と遠慮している企業もありそうです。

星:

ありますね。逆にLGBTフレンドリーが当たり前すぎて、「今さら言うのも……」と情報発信していない企業もあります。でも、そういう企業ほど発信していかないと、社会全体が変わっていかないと思うんです。

 

また、しっかり取り組んでいても「採用メッセージで打ち出すとLGBTの応募が殺到し、受け入れきれないのでは」と考え、発信を躊躇する企業もあります。でも、LGBTであろうがなかろうが、就職活動では受かる時は受かるし、受からない時は受からない。普通に就活や転職活動をしている中で、LGBTフレンドリーな企業という選択肢が増えるといいなというだけなんです。それを「落とすのはかわいそう」「LGBTフレンドリーを採用メッセージに打ち出すのはリスクだ」と思ってしまうのは、まだまだ本当の意味での理解は進んでいないと感じます。

日本はLGBTフレンドリーへのポテンシャルが高い

行政と国際的な流れで、LGBTへの取り組みが加速している

―― 起業からの3年間で、社会の流れや環境は変わってきましたか?

星:

大きく変化しています。3年前は営業で企業に行っても「うちにはLGBTはいないので」と言われたり、そもそも「LGBT」という言葉もそれほど浸透していませんでした。それが今では企業研修で「LGBTという言葉を知っていますか?」と聞くとほぼ100%手が挙がります。本当に、世の中の状況が変わったなと思います。

 

その契機となったのが、2020年の東京オリンピック・パラリンピックと、渋谷区の同性パートナーシップ条例。行政が取り組みを始めたことと、国際的な視点がダイバーシティの観点でも日本に集まることによって、特にオリンピックスポンサーのような大手企業を中心に変わってきて、社会の理解が進んでいます。また、当事者側も「LGBTフレンドリーな企業がある」と認知しだしたと感じています。

左手を開いて右前をさしながら笑顔で話す男性

「JobRainbowのユーザーも爆発的に増えていて、今は月約20万人の方にご利用いただいています」

―― 国際的な視点で見ると、日本のLGBTに対する環境はどの程度進んでいるのでしょうか?

星:

比較する国によりますが、欧米諸国と比べるとやはり日本は遅れているなと、特にアメリカを見ていて思います。

 

アメリカでは、30〜40年前から市レベルで同性パートナーシップを認めようとする動きが始まり、2015年に全州で同性婚が認められました。エンターテイメントでもやっと最近LGBTの話題が取り上げられるようになり、LGBTに関する作品がアカデミー賞を獲るまでになりました。アメリカでも今もLGBTに関する課題は盛り上がっているし、逆に反発も起きていたりします。それに比べると、日本はアメリカで30〜40年前に起きていたことがやっと始まった段階です。

 

一方で、企業の取り組みスピードは非常に速い。日本はそこがとても特徴的で、一社が取り組み出すとその波紋が大きく広がる傾向があります。

日本はLGBTが受け入れられやすい文化的な土壌がある

星:

日本は宗教上の理由で絶対に受け入れられないという人が少ないという点で、受け入れられやすい土壌があると感じています。

 

同性婚が認められた後のシアトルへ行ったとき、自身がゲイであることを現地の友人のお母さんに話しました。そのお母さんはすごく優しくしてくれたのですが、「賢人がゲイであることは受け入れるけれど、地獄に落ちちゃうのはかわいそうね」と友人に話していたそうです。

 

一番悲しかったのが、シアトルで仲良くなったゲイの友人が敬虔なクリスチャンで、本人も自分を認められないと話していたこと。どんなに自身を受け入れられるように説得を試みても「何度もいろんな解釈をしようとしたんだ。でも、どう解釈しても聖書にはこう書いてある。だから、自分でも自分を受け入れられないんだ」と。その時、文化や宗教の深い影響や違いを感じました。

―― 日本は宗教などの明確な理由ではなく、なんとなくの空気といった無意識な部分で差別が生まれる傾向がある分、取り組みにくいのかと思っていました。

星:

確かに日本は、無意識な偏見や空気で差別が生まれやすい環境です。逆に言えば、空気を変えればみんな変わるということ。今、すごい勢いで変化しているのも、「LGBTを受け入れていこう」という空気が先行しているからこそだと思います。日本は、LGBTフレンドリーになっていくポテンシャルが非常に高いです。

LGBTフレンドリーであることは、みんなが自分らしくあれる環境であること

渋谷を世界のLGBTのスクランブル交差点に。3月30日、LGBT合同説明会「Real JobRainbow」開催

―― 2019年3月30日には、渋谷ヒカリエでLGBTフレンドリーな企業の合同説明会「Real JobRainbow」を開催されますが、どのようなイベントですか?

星:

約20社が出展する予定で、400〜800名の来場規模で準備しています。

 

渋谷は日本で最初に同性パートナーシップ条例を作り、ダイバーシティを大きく進めている街です。また、世界的な注目度も高い街ですよね。渋谷が世界中からいろんな人が集まり関わる「LGBTのスクランブル交差点」になるようにしたいという思いから、渋谷ヒカリエで開催することになりました。

「Real JobRainbow」は東急電鉄協力のもと、渋谷スクランブル交差点での広告や、東急電鉄の車両広告も掲載しています

渋谷のスクランブル交差点にあるTSUTAYAのビル広告に「Real JobRainbow」の広告が載っている

星:

当日は、いくつかのセミナーを用意しています。例えば、自分らしく働くための就職・転職活動のポイントを伝えるセミナーがあります。服装なら、フォーマルな格好でも、自分らしさは表現できるなど。面接では「わがまま」と「自分らしい」の線引きが難しいですが、そのバランスを保ちながら自分らしさを伝えていことに挑戦できるよう、考え方やテクニックをお伝えします。

 

また、メイク講座なども予定しています。特にトランスジェンダーの方だと、女性らしく見えるように普段濃い目のメイクをしていて、就活時のナチュラルメイクは不安という方が多くいます。そこでプロのメイクアップアーティストによる一対一の講座で、自分らしさとTPOを両立するテクニックとお伝えします。

―― 自分らしさとTPOの両立は、LGBTに限らず、すべての人に共通する話ですよね。

星:

LGBTフレンドリーな企業は、ダイバーシティへの取り組みが進んでいるということなので、当事者に限らず自分らしくありやすい環境です。実際、当事者以外からも、LGBTフレンドリーであることが理由で就職先に選ばれることがあります。JobRainbowの求人から就職したストレート(異性愛者)の方もこれまでにいました。また、LGBTへの取り組みを始めたら、女性からの応募が増えたという企業もあります。

 

もちろん、Real JobRainbowもセクシュアリティに関わらず、いろんな人に来ていただきたいです。

どんな人でもマイノリティであり、マジョリティ。LGBTを突破口に、ダイバーシティを自分ごとへ

星:

どんな人であっても、いろんな側面で見るとマジョリティ性もマイノリティ性も持ち合わせています。私もゲイというひとつのマイノリティ性を持っていますが、一方で日本社会の中で女性か男性かであれば男性として生まれているし、日本国籍であるというマジョリティ性も持っています。

 

さまざまなマイノリティ性がある中でも、LGBTは社会課題のすべてが詰まっている先進課題と言えます。セクシュアリティは見た目だけではわからないけれど、その人のアイデンティティに直結しています。だからこそ、周囲の環境によっては、非当事者側が傷つけたいと思っていなくても、傷つけてしまっている現状があります。それは、介護や癌サバイバー、精神障害者といったLGBT以外のマイノリティの課題にも共通する部分です。

 

だから、LGBTへの取り組みを突破口に、見えない課題にみんなが寄り添い、ダイバーシティを自分ごとにしていけたらと思っています。企業においては、それが結果的にチーム全体の心理的安全性を高め、生産性が上がったりイノベーションが起こったりと企業利益にもつながるはずです。

―― 最後に、星さんが目指す社会を教えてください。

星:

最終的には、LGBTという言葉が不要なくらい、性自認や性的指向が本人に委ねられる社会を作っていきたいです。その未来へ向け、今はまず社会全体で「LGBTフレンドリー」を大きく進めていきたいですね。

白壁と大きな窓が明るいオフィスで、JobRainbowのロゴである虹色のクリスタルがついた黒いシャツを着た男性が立っている

「LGBTは自己実現に直結する話。みんなが自分らしく活躍できる社会を目指したい」と強く語ってくださった星さん

SHARE
RELATED
MORE
RECOMMEND